退職前の有給申請|残日数から伝え方を決める
退職前に有給を使うなら、残日数と退職日を照合し、取得希望日・引継ぎ予定を添えて上司か人事へ伝えます。時季を変えてほしいと言われたときは、理由と代替日を確認します。まず残日数を数えます。
- 有給は請求した時季に与えられるという原則と、例外になる条件
- 入社日と継続勤務年数で決まる、付与日数の一覧
- 時季変更で移せる範囲(退職日より後には移せないこと)
- 年5日の時季指定と、計画的付与で先に消化される分
- 有給を取った日の賃金の決まり方
- 退職日と最終出社日の逆算、引継ぎとの組み方
公的情報源: e-Gov法令検索「労働基準法」第39条/e-Gov法令検索「民法」第627条/厚生労働省「確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト」
- 残った有給は、使ってから辞められるのかな
- 買い取ってもらうことはできるんだろうか
- 引継ぎと有給、どちらを先に考えればいいの
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目次
残日数と退職日から、申請する日を決めます
最初に押さえるのは、有給は会社が「あげるかどうかを決めるもの」ではないという点です。有給は請求した時季に与えられるのが原則で、労働基準法第39条第5項が定めています。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
「請求する時季に与えなければならない」が原則で、例外は「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。退職日までに残っている有給も、この原則のとおりに請求できます。

「退職する人に有給は出さない」という運用を聞くことがあります。ただし条文の例外は、事業の正常な運営を妨げる場合だけです。まず残日数を数えておくと、会社との話が具体的になります。
上司・人事へ、取得希望と引継ぎを一緒に伝えます
残日数と退職日を確認したら、上司または人事に「取得したい日」と「引継ぎを終える日」を分けて伝えます。退職を伝えた直後は、次のように切り出せます。
退職の意思をお伝えしたうえで相談があります。残っている有給休暇を○日、○月○日から退職日まで取得したいです。引継ぎは○月○日までに終える計画です。
引継ぎと日程を一緒に相談する場合は、取得希望日を先に示し、相手が確認する項目を残します。
退職日は○月○日を希望しています。有給は○月○日から取得し、○月○日までに引継ぎ資料と説明を終えたいです。業務の順番や日程を調整する必要があれば、候補日を教えてください。
「退職する人に有給は出さない」と言われたときは、感情的に反論せず、時季を変更する理由と代替日を確認します。
取得できない理由が、事業の正常な運営を妨げることに当たるか確認したいです。変更が必要な業務と、退職日までに取得できる代替日を教えてください。
自分の残日数を確かめるには、法律で何日付与されるかを知っておくと便利です。労働基準法第39条第1項は、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、10労働日を与えることを求めています。
そのうえで、継続勤務年数に応じて日数が加算されます。加算分を含めると、最大20日です。
| 6箇月経過日から起算した継続勤務年数 | 加算される日数 | 与えられる有給休暇 |
|---|---|---|
| 6箇月 | — | 10日 |
| 1年 | 1日 | 11日 |
| 2年 | 2日 | 12日 |
| 3年 | 4日 | 14日 |
| 4年 | 6日 | 16日 |
| 5年 | 8日 | 18日 |
| 6年以上 | 10日 | 20日 |
出典: e-Gov法令検索「労働基準法」関連する規定(2026年9月時点)
短時間勤務の場合は、週の所定労働日数に応じた別の決まりがあります。 実際に何日残っているかは、勤務先の付与の記録と自分の取得日数を突き合わせて確かめます。
日数の数え方には、出勤したものとして扱う期間があります。業務上の負傷や疾病で療養のために休業した期間、育児休業と介護休業の期間、産前産後の女性が休業した期間は、出勤したものとみなして数えます。
法律の日数は「最低これだけは与える」という決まりです。事業場によっては、それより多い日数を付ける決まりもあります。就業規則に書かれた数字も見ておくと、確かめやすくなります。
会社が時季を変えられるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです
会社が時季を動かせるのは、条文に書かれた1つの条件を満たすときだけです。それが「事業の正常な運営を妨げる場合」です。
つまり、繁忙期であることや、担当者が少ないことは、それだけで例外になるわけではありません。退職日までの残り期間で本当に業務が回らないのかどうかが論点になります。
時季変更を言われたときは、理由と、代わりの時季をあわせて確かめます。「いつなら取れるのか」を聞いておくと、退職日の再計算ができます。
時季変更で移せるのは、雇用が続いている期間の中です
時季変更は、請求された時季を別の時季に移す仕組みです。移せる先は、その人が働いている期間の中の別の日になります。 退職日が決まっている場合は、退職日より後の日には移せません。退職日より後は勤務日ではなく、移す先の日がないためです。
この点は、退職前の有給を考えるときの分かれ目になります。退職日までに有給の予定を入れておけば、会社が時季を動かせる余地はその期間の中だけになります。反対に、退職日を先に決めてから「有給は取れない」と言われた場合は、移す先がないことと、事業の正常な運営を妨げる場合に当たるかを、分けて確かめます。
年5日は、会社が時季を定めて与える分です
有給のなかには、自分で時季を請求する前に、会社が時季を定めて与える分があります。10労働日以上与えられる労働者については、基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて5日を与えることになっています。
この5日は、次のように扱われます。
- 自分が請求した時季に与えられた有給や、労使協定による計画的付与で与えられた有給は、この5日から差し引かれます。
- 労使協定で時季についての定め(計画的付与)をした事業場では、5日を超える部分は、その定めに従って与えることができます。
| 有給の分け方 | 時季を決める人 | 決まり |
|---|---|---|
| 自分が請求する分 | 労働者 | 請求した時季に与えなければならない。例外は事業の正常な運営を妨げる場合だけ |
| 年5日の時季指定の分 | 使用者 | 基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて5日を与える |
| 計画的付与の分 | 労使協定の定め | 5日を超える部分について、協定の定めにより与えることができる |
そのため、「気づいたら有給が減っていた」という場合は、計画的付与で先に消化されている分があると考えられます。残日数を数えるときは、自分で取った日だけでなく、会社が時季を定めた分も同じ記録で確かめます。
まとまった日が取れないときは、時間単位の有給を使える場合があります
退職日が近く、残日数を日単位で取るのが難しいこともあります。事業場に労使協定があり、対象になる労働者であれば、有給の日数のうち5日以内について、時間を単位として与えることができます。 対象になる労働者の範囲と、時間単位で与えられる日数は、協定で定めます。
使えるかどうかは勤務先の協定の有無で決まるため、就業規則と合わせて確かめます。時間単位で消化できる分は、退職日までの残り期間の調整に使えます。
買取りの決まりは、法律にはありません
「使わなかった有給を買い取ってもらえるか」は、よく聞かれるところです。労働基準法第39条には、買取りに関する決まりがありません。
そのため、買取りは法律上の権利として請求できるものではありません。まず使う日を請求する、という順番で考えます。使えなかった分の扱いをどうするかは、勤務先の決まりと相談して決めます。

有給を取った日の賃金は、どう支払われますか
有給を取ると給料が減るのかどうかは、先に確かめておきたいところです。有給の期間の賃金は、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金か、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払うことになっています。
労使協定で別の定めをした場合は、健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する金額などによることもできます。
いずれの場合も、有給を取った日が無給になるという決まりではありません。日給制や時給制の場合は、どの額で計算するかが就業規則と賃金規程で決まっているため、有給の予定を出す前に確かめます。
判断に迷ったときに確認する先
時季変更の理由に納得できないとき、付与の記録と自分の数え方が合わないとき、買取りだけを勧められたときは、自分で結論を出さずに公的な相談先で確認します。
「確かめよう労働条件」には、働く人向けのQ&Aと、労働条件相談ほっとラインの案内があります。休暇の扱いも相談できます。
相談するときは、入社した日、有給の付与の記録、請求した日と会社からの回答を手元に用意します。やり取りを日付で追えるようにしておくと、話が具体的になります。
退職日は、2週間と有給の残日数から決めます
退職日の決め方は、2つの数字を組み合わせます。1つは民法第627条の「申入れから2週間」、もう1つが有給の残日数です。
たとえば、有給が10日残っていて、月末を退職日にしたい場合を考えます。申入れは遅くとも2週間前、最終出社日は退職日の10日前が目安になります。この2つを先に決めると、上司に伝える日が決まります。
有給の日数だけ退職日を後ろに延ばす必要はありません。退職日は申入れで決まるので、有給は退職日までの勤務日に充てます。 退職日を動かすかどうかは、引継ぎの予定と相談して決めます。
伝える相手と順番、引き止められたときの答え方は退職はいつ伝える?2週間前の根拠と切り出し方にまとめています。
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有給と引継ぎを両立させる組み方
有給は「退職日までに取る」と決めても、引継ぎの予定と重なると動かしにくくなります。重なりそうなときは、決める順番で解決します。
先に有給の予定を決めて、その前後に引継ぎを置きます。たとえば、最終出社日の前の2週間で引継ぎを終え、残りは有給に充てる形です。有給の予定が先にあれば、引継ぎの範囲もその前の期間に収まります。
引継ぎの期間中に有給を取る場合は、引継ぎ先が同じ内容を確認できるように、手順を書いたメモを残しておくと、休んでいる間の問い合わせが減ります。
- 付与の記録から、残日数を数える(会社が時季を定めた分も含める)。
- 退職日の候補を決め、残日数を引いて最終出社日を出す。
- 有給の予定を先に決めて、その前後に引継ぎを置く。
- 退職日までに、有給を請求する。
- 時季変更を言われたら、理由と代わりの時季を確かめる。
- 判断がつかないときは、公的な相談先で確認する。
よくある質問
退職前に、残った有給を全部使えますか?
請求した時季に与えることが原則です。会社が別の時季に動かせるのは、請求された時季に与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。 ただし、退職日までの期間や残日数によって取れる日は変わります。
使わなかった有給は、買い取ってもらえますか?
労働基準法第39条には買取りの決まりがありません。 買取りは法律上の権利として請求できるものではないため、まず使う日を請求します。使えなかった分の扱いは、勤務先の決まりを確かめて相談します。
有給を取る日を、会社から指定されました。従うべきですか?
会社が時季を動かせるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。 また、年5日の時季指定の決まりなど、別の規定が働く場合もあります。判断に迷うときは、確かめよう労働条件など公的な相談先で確認します。
まとめ
- 有給は、請求した時季に与えられます。時季を動かせるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。
- 法律で定められた日数は、6箇月で10日、6年以上で最大20日です。自分の残日数は付与の記録で確かめます。
- 退職日は「申入れから2週間」と有給の残日数から逆算します。引継ぎの予定は、有給の予定を決めたあとに置きます。
まず残日数を1つの数字にしてください。その数字が出ると、退職日と最終出社日が両方決まります。
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参考にした資料
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e-Gov法令検索「労働基準法」第39条(年次有給休暇。第5項=使用者は労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければならない。請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては他の時季に与えることができる。買取りに関する定めは無い) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 (2026-09-16取得)
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e-Gov法令検索「労働基準法」第39条第1項・第2項(第1項=雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に十労働日。第2項=六箇月経過日から起算した継続勤務年数1年で1労働日、2年で2労働日、3年で4労働日、4年で6労働日、5年で8労働日、6年以上で10労働日を加算) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 (2026-09-16取得)
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e-Gov法令検索「民法」第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ。雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (2026-09-16取得)
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厚生労働省「確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト」(働く方のQ&A、法令・制度の紹介、労働条件相談ほっとライン) https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/ (2026-09-16取得)
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e-Gov法令検索「労働基準法」第39条第4項・第6項・第7項・第8項・第9項・第10項(第4項=労使協定により5日以内の範囲で時間を単位として与えることができる。第6項=労使協定により時季に関する定めをしたときは5日を超える部分はその定めにより与えることができる。第7項=10労働日以上与えられる労働者に、基準日から1年以内に時季を定めて5日を与えなければならない。第8項=請求又は定めにより与えた分は時季指定を要しない。第9項=有給休暇の期間の賃金は、就業規則等で定めるところにより平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。労使協定で標準報酬月額の30分の1に相当する金額等を支払う旨を定めたときはこれによる。第10項=業務上の負傷・疾病の療養のための休業期間、育児休業・介護休業の期間、産前産後の休業期間は出勤したものとみなす) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 (2026-09-16取得)